• ユーロスペース
  • 釜山国際映画祭
10/17(金)20:30〜(最終回上映後)
黒沢清×鶴田法男×高橋洋
ユーロスペースでの最後のトークイベントは、黒沢清監督を招いて実施された。 まず、演出家の視点らしく“女優の熱演”に話題が及び、木村佳乃の「発散型」の(あえて感情を剥き出しにした)芝居とその演出方法に賛辞が贈られた。一般からの感想にも時々見受けられるとおり、『おろち』の鶴田演出にはどことなく“舞台演出”の空気が感じられる。それは、楳図原作の映像化に相応しい手法を模索した末に辿り着いたひとつの結論なのかもしれない。木村佳乃演じる門前葵の出演作のフィルムが焼け落ちるシーンでは、「高橋、鶴田の作った映画だけに、(映像の中に)霊の姿を探しまくった」と笑いも交えながら、演出に関する鋭い指摘は続く。「“おろち”とは何者か、それが原作と深く向き合った立場でないと判断しにくいところだが、映画で描かれている彼女の雰囲気は、好きなテイスト」と、不思議な能力を備える美少女の存在に興味深い様子。おろちが佳子として屋敷に戻ってくるシーンについても、「舞台をあの場所に戻す、という物語の運び方が、やはりそうだろう、と。キーになる物語があの場に据えられるのは、こちらが期待するとおりの展開」と、原作でも印象的な洋館の使い方についても言及。さらに黒沢監督が「一度はやってみたかった」という「血液交換」の場面について、鶴田監督が「あのシーンで使用した“微妙にカットをずらす”手法は、黒沢監督の『LOFT』を意識してやらせて頂きました」と告白。対して「霊を描く時には鶴田演出を参考にしている」と黒沢監督が返すなど、お互いの演出に刺激を受け合っているエピソードも披露された。
この日がユーロスペースでの千秋楽ということもあり、豪華な顔ぶれで締められたトークイベント。これまで原作者・楳図かずお氏、主題歌アーティスト・柴田淳さんなども登壇され、興味深いコメントを残していった。『おろち』を既にご覧になった方も、未見の方も、ゲストの残したちょっとしたエピソードから視点を変えて作品に接してみてはいかがだろうか。
10/5(日)20:30〜(最終回上映後)
楳図かずお×柴田淳×鶴田法男
そして、トークイベント2回目は、原作者・楳図かずお氏と主題歌アーティストの柴田淳さんをお迎えし、静かな熱気に包まれた初回とはうって変わって、賑やかに開催された。『おろち』主題歌の制作に当たっては、なんと「5曲の候補を書き下ろした」と柴田さん。通常は1つのテーマに対し1曲のところを、子供のころから大好きだった楳図さん原作の映画主題歌という大役に燃え、5つのバリエーションを揃えたという。「アルバム3枚分の力を使った」と笑顔で語っていたが、そのクオリティの高さは選曲に当たったスタッフが「取っ組み合い寸前になるまでモメた」ほど、どれも素晴らしい完成度だったそうである。鶴田監督からはこんなエピソードも。撮影中の現場を訪問した柴田さんに、監督が「5曲のうち、柴田さんのオススメは?」と尋ねたところ、柴田さんの答えは「監督が決めてください」と、バッサリ。結果、柴田さんが5曲の中で最初につくった『愛をする人』が選ばれたという。楳図かずお氏も「映画の余韻を壊すことなく、でしゃばり過ぎず、きれいな歌声が心地よく入り込んでくる」と絶賛。最後は観客全員による“サバラ”で閉めて、笑顔の絶えないイベントとなった。
登壇者のカラーによってまったく異なる雰囲気に包まれるトークイベントの3回目は、黒沢清監督が登場。黒沢×鶴田×高橋という、Jホラーを牽引した稀代のクリエイター同士が『おろち』を熱く語る。10月17日(金)は是非、ユーロスペースへ!
http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=165
9/27(土)20:30〜(最終回上映後)
鶴田法男×高橋洋
『おろち』公開後、最初のトークイベントは、脚本と監督という、いわば映画の心臓部にあたる部分を担ったスタッフから、製作過程の貴重なエピソードが披露された。作品鑑賞後の観客の前で製作に関わった当人達が語るという機会は、これが初めて。上映終了後一人として立ち去る者もなく、満席となった場内を、映画の余韻と熱気が静かに伝播しているようだった。聴き入る観客を前に、高橋氏は「原作の連載開始当時、第一話『姉妹』を読んだ時の衝撃をずっと引きずっていた。このエピソードの姉妹編にあたる物語が、連載の中でもう一度必ず描かれるはずと直感し、最終話『血』が掲載された時、“やはり来た”というゾクゾクした感覚に襲われた」と、この二つの物語が映画の脚本づくりに与えた源流となるエピソードを披露。完成した脚本に目を通した鶴田監督は、「この脚本なら楳図作品の映画版の中で、最高のものができる」と確信したそうである。もともと鶴田監督がこの作品のオファーを受けた際、「楳図映画の最高傑作を作らなければ、自分がこの仕事を受ける意味はない」と自らに言い聞かせていたという。結果、40年の歳月を積み重ねて生まれた映画『おろち』は、原作者自身も手放しで賞賛する傑作となった。
おろち(英タイトル: OROCHI -BLOOD-)
部門: Midnight Passion
ゲスト: 鶴田法男監督


上映日は3日間、会場を変えて行われ、10月8日がメイン上映。
1.10月4日 24:00〜 (Busan Cinema)
2.10月6日 24:00〜(Megabox 6&9)
3.10月8日 20:30〜 (Primus 1&6) ※メイン上映

10月4日、6日はともに深夜24時からの上映にもかかわらず、4日は満席、6日は8割強という大変な人気ぶり。鶴田監督も現地を訪問。上映中エンドロール前で拍手が巻き起こる。
8日の上映は所謂メイン上映にあたり、上映後には鶴田監督との質疑応答の時間が用意されていた。同日夕方には既にチケット完売、2スクリーンをフルキャパにする大盛況であった。上映中も、笑いや悲鳴、息をのむ緊張感に、劇場が一体感に包まれていた。エンドロールで立つ人は殆どおらず、Norio Tsurutaのクレジットに大きな拍手。その後の質疑応答は、まず冒頭に監督のハングルによる自己紹介で会場が大いに沸き、終始和やかな雰囲気で進行した。鶴田監督が、韓国でも有名な黒沢清監督、中田秀夫監督、清水崇監督にも影響を与えたまさにJ-ホラーの先駆者であることが明かされると、再び大きな拍手と歓声が上がった。客席からの質問内容は、作品に対する賛辞のみならず、率直な質問(「物語に於けるおろちの存在意義は」「おろちとは何者なのか」等)も多く、熱のこもった時間が続いた。通常30分程度設けられているコミュニケーションの時間に、結果1時間近く費やすことになったのも、客の関心の高さを物語っている。
質疑応答後拍手鳴り止まぬ中、誰からともなく鶴田監督の元に集まり、あっと言う間にサインを求める人だかりに。鶴田監督の手腕が、韓国の映画ファンの胸に響いた瞬間であった。